気づけば全て同じ

赤と黒と緑と黄色のパッチワーク柄をした二匹の芋虫が踊っている。 二足歩行も堂に入った感じで。 ひとしきり踊った後、二匹の芋虫は地面に寝そべった。 芋虫の色がどんどん無くなっていく。 全ての芋虫は一度だけ鮮やかになる。 そしてただの芋虫へと戻って…

繰り返すだけの時代絵巻

ずっと時代の上を飛んでいた。 過去からずっと時代は絵巻のように繋がっていて 私はただ絵巻の上を飛んでいるのだと思っていた。 何年もフラフラと飛び続けて、ある日ふと低空飛行をしてみようと思い立った。 絵巻に近づくとそこは病院で、待合室のベンチの…

方向なんて高級品

消えたさる吉くんの残したメッセージをりす山さんが見せてくれると言った。 大雨の中、二人で梯子を登り屋上に出た。 りす山さんは持っていた寝袋を袋から出し、地面に置く。 「この角度から見るの」と言って地面に寝転がった。 丸まったままの寝袋のしわを…

V.I.Pその後

真ん中にこの部屋にはそぐわない大きさのテーブルがあるな、 と近づくと、それはテーブルではなく水槽だった。 深さは20センチもなく、中は藻とコケがそよそよと揺らいでいた。 女主人はその水槽におもむろに手を入れると、藻とコケの中から ピンポン大の黒…

彼女のウェーブ

「ゴォーッ」という音がして、 豪邸を覆うようにさらに大きな豪邸が建っていく。 あっという間に、大きな豪邸の中に豪邸がすっぽりと納まった。 ここから始まり。 その豪邸に住む娘には祖母に決められた許婚がいた。 大きな豪邸と豪邸の間のスペースで彼女は…

のうみそだいすき

森の中の坂道を登っていくと、ジェットコースター乗り場に出た。 そこは一応広場になっていておそらく遊園地なのだろうけれど、 目の前に高層ビルが建っているので他に乗り物があるのかは確認できない。 その高層ビルの後ろには巨大な魚の石造があって、 見…

サンドロール君は今日も元気

じめじめとした砂利道に人が座っていた。 人の髪はセンター分けで、その分け目に沿って ショッキングピンクのフィリングがのっかっていた。 それはまるでサンドロール。

愛なんか詰めるな

ポリダックから貰ったホワイトボードに矢印を書いていたら O氏があちらに向かって歩くのが予想できて、うなだれた。 気を失った。 こたつで丸まっているときに目が覚めて、 背後に白いものの気配がした。これもあちらに向かっていた。 また気を失った。 階…

ありふれたマシン

餅屋に並ぶために開発されたロボット。 コンセントが抜けているのにそいつは立派に並んでいた。 飛んでくるきな粉を避けながら、並ぶロボットを見つけた。 風に舞ったきな粉がロボットの頬を掠めるのは 夏の終わりを表している。 もう地下室でロボットと出会…

それはもはや傷み

切手を剥がすと、封筒の一部が破れてしまった。 その向こうに見える風景。 ペダルの上に透明のサラダボールがカポッと被さっている。 裸足がサラダボールを確かめるように叩く。 ペタペタペタペタ・・・

やどかりデパート大忙し

「やどかりデパートにxasnaw xmmcsa氏がやってくる!!」 と書かれた横断幕がやどかりデパートの中庭に掲げられていた。 黒いチューブで区切られたスペースに店員が立っていて 傍を通りすぎようとしたら「タダでいいので見て行ってください」 と、そこに三角…

誰だってうどん屋

家の中に灰色と茶色の石が波をイメージして敷き詰められていた。 すっかり忘れていたが、ここにうどん屋は確実にいる。 早くうどん屋を隠さねば、と焦りだす。 だがどうにも見つからない。 すると突然、本棚の横に座っていた人が「実は私うどん屋でね・・・…

途切れ何重奏

「さあ今から音も無くこの池に飛び込むのだ、と思った瞬間に自分になって つまりそれまでの記憶は誰かの元にあるということなのだから それは当然なのだけど、右を見て左を見て右を見て左を見ても 自分の足跡がどこにもなく途方に暮れるという作業をキミなら…

踊る方の踊り

旅館のテーブルの上にくちゃくちゃに丸められた新聞紙が置いてあった。 そーっと近づいていくとカサカサと中から音が聞こえる。 恐る恐る新聞紙を開くと、中から「24」という文字と 灰色が逃げ出そうとしていた。 「24」はもうほとんど抜けていたけれど…

明日はエスパー

街を歩いていている最中ずっと、 すれ違う人がすれ違う瞬間に次にすれ違う人に変わるという現象。 少しだけタイムスリップし続けている。

夢にまで見た

中身がからしの消火器は、容器までからし色をしていた。 消火器の周りを白いプラスチックの管がぐるぐると巻いてあり、 その先は壁に埋まっていた。 1メートルほど向こうからまたプラスチックの管が出ていて それは私の背中に接続されていた。 しっぽ・・・…

レレレレ礼文島

首の横のくっつかない程度の距離にもーちゃんが丸まっている。 ずっと浮かびっぱなしのもーちゃんはもう限界だった。 ふらふらとしていて、もう少ししたら肩に着きそう。 私はなるべく見ないようにしている。 いや、元からもーちゃんの姿が見えたことなんて…

白昼、堂々と白

気がついたら車の左ドアに左半身だけ生えていた。 右はどこに行ってしまったのか。 車は道路を時速60キロで走る。 左半身の生えた位置が低かったので、 道路に擦らないよう三角座り程の角度に 足を曲げ続けた。

落日屋

昼の長さに疲れ果て、月を祝うダンスを踊ってしまった。 遠くで昼間だけの村の人たちが泣いているのが聞こえた。 山の向こうからテンテンと灯りが燈り出す。 私の足下にあるガラスにも光が差し込み その下で飛び跳ねる一匹の魚が見えた。 「外と中」と言って…

ドロップアウトでまとも行き

大小2羽の鳥が低い柵の中で飛びまわっている。 右目だけが猫で、全体としては犬という生き物がそれをじーっと見ていた。 鼻先でちょんと柵をつついてみたりと微笑ましい光景だった。

勝手口より愛をこめて

工場の裏手は高い塀に囲まれていた。 青い鉄のワンピースを着た女の子が、 ゆっくりと少しだけ開く勝手口から外に出ようか出まいか悩んでいた。 どうせ外に出たところで三輪車に乗った子供警備隊に 連れ戻されるに決まっている。 飛び出た後のことを考えた。…

予告臭

庭で出会ったBOY-Sは目がまん丸で瞬きをしない人だった。私の持っていた籠が空だったせいか「カブト虫をあげよう」と言う。 「ああ、どうも」と言って待っていると BOY-Sの後ろからブーンと一匹のカブト虫が飛んできた。カブト虫の尻からねずみの尾っぽが生…

ねずみ音頭

40センチ四方の木箱に乗って旅に出ることに決めた。 ゆっくりと線路の上を走る木箱は町中の人たちには どうやら違和感が無いようで、皆普通に傍を歩いている。 木箱の走る線路は白いねずみで出来ていて、 進むたび、ねずみが「うげっ」と言ってつぶれていく…