彼女のウェーブ

「ゴォーッ」という音がして、
豪邸を覆うようにさらに大きな豪邸が建っていく。
あっという間に、大きな豪邸の中に豪邸がすっぽりと納まった。


ここから始まり。


その豪邸に住む娘には祖母に決められた許婚がいた。


大きな豪邸と豪邸の間のスペースで彼女は黒いカバンを開ける。
四角いバッテリーを取り出した。
そのバッテリーを見つめると彼女は許婚とテレパシーで話すことが出来る。


彼女の向こうに海辺とエンジ色のソファがうっすらと浮かび出した。
もうすぐテレパシーが始まるのだろう。



バッテリーを見つめる彼女の髪のウェーブが、脳裏に焼き付いて離れない。