繰り返すだけの時代絵巻

ずっと時代の上を飛んでいた。
過去からずっと時代は絵巻のように繋がっていて
私はただ絵巻の上を飛んでいるのだと思っていた。


何年もフラフラと飛び続けて、ある日ふと低空飛行をしてみようと思い立った。


絵巻に近づくとそこは病院で、待合室のベンチの下に自分のセーターが
たくさん詰まっていることに驚いた瞬間、
彼女がおぎゃーと産声を上げた。


それからずっと彼女の上を飛び続けた。


彼女が小学生になったとき、親に与えられたロフトベッドは
私の飛ぶ上空よりも背が高かった。
(ベッドカバーがいつも雲に触れていた)
時々、彼女が深い眠りに入ったあとその寝顔を確かめに行った。


彼女が中学生になったとき、彼女の趣味はヘチマの花摘みで
年中ヘチマを求めて絵巻の中を右往左往していた。
彼女は時々時代を間違えた。


彼女が高校生になったとき、ある日私は彼女の家の天袋に忍び込んだ。
彼女はベランダで一日外を眺め、次の日ベランダの柵に腰をかけた。
私は彼女の後姿に叫んだ。
それがどんな言葉だったのかは覚えていない。


彼女は振り返った。
初めて、彼女と目が合った。