勝手口より愛をこめて

工場の裏手は高い塀に囲まれていた。
青い鉄のワンピースを着た女の子が、
ゆっくりと少しだけ開く勝手口から外に出ようか出まいか悩んでいた。
どうせ外に出たところで三輪車に乗った子供警備隊に
連れ戻されるに決まっている。


飛び出た後のことを考えた。


スーパーの樋からピンクの羽衣が伝い落ちてきて
凍った蟹が滑り出す。
左右から風が吹き込む。


女の子は勝手口に手をかけて外を見た。
子供警備隊が一人で遊んでいた。