V.I.Pその後

真ん中にこの部屋にはそぐわない大きさのテーブルがあるな、
と近づくと、それはテーブルではなく水槽だった。
深さは20センチもなく、中は藻とコケがそよそよと揺らいでいた。


女主人はその水槽におもむろに手を入れると、藻とコケの中から
ピンポン大の黒いものを取り出し、もしゃもしゃと食べだした。
それはとても水水しく、美味しそうな黒い丸だった。


「ここを16階だと思い込んでるだけなの」と言って、
女主人は部屋から出て行ってしまった。


ここは本当はビニール袋の中なんだ、と言わずに済んでホッとしたが
同時に言いようの無い悲しみがこみ上げた。