巨木が見たいだけ

草原に立つ何本もの巨木は枝同士が繋がっているという世界遺産
それはここから見える高架の向こうにあるらしい。
その方向からサクラの軍団がやってくる。


マンションの一室に死体があることがわかっているが
知らないフリをして中に入る。
顔だけ出して濡れた白い布に包まれた死体が確かにあった。
が、まだ死んでいなかったらしく目がギョロっと見開く。
濡れた布にキッチンペーパーを押し付けて水分を取ろうとするが
キッチンペーパーなんかではどうにもならない。


死体?に「早くここから出て行け」と小さな声で忠告される。
宗教はマンションを定期的に変えていく。
偽者はその都度マンションに閉じ込めて、そこを墓としていくのだと言う。
もうこのあたりは墓だらけだった。
遠くでブザー音がしたので、荷物を持ってその部屋から出て行った。


途中で立ち寄ったファミリーの一室でも逃げる準備をしていた。
皆、それぞれお気に入りのバスタオル一枚を持って逃げるらしい。
「そんなもんなのか」と少し拍子抜けする。


マンションを出るとトラックの荷台に荷物が山積みされていた。
中にはユニットバスが丸ごと詰まれているものもあった。
隣に立っていた人が「あれはね、専用の宇宙服で一般のとは訳が違う!」と力説するが
そんなことより、マンションの周りの腰ほどまでしかない低い塀の一部が
なくなっていることが気になって、近くにあった横型ロッカーをはめることにした。
しかしなんとかしてはまったものの、少し高さが合わなかった。
するとさっきの人が「それじゃまるで小人のアスレチックだ!」と笑った。
もう一度塀にはめられたロッカーを見直すと小人が飛び回っていた。


高架の向こうからサクラの軍団がやってくる。
脳内で描かれる、枝同士の繋がった巨木を上空から眺める絵。
早く、その絵が見たいのに。