検定しますよ

鯉の頭から背中にかけてがゴソっとえぐれていた。
近くにいた人がその鯉に消毒をしていたがきっともう無理だろうと思う。


鯉の流れ行った方を目指して歩いていると
主婦と子供たちが新聞を読んでいた。
「子供にも手の届くカメラ!」というコピーとともに
「1,080」という文字が書かれている。
円じゃなくて個らしい。
カメラの欲しい子供は全国に1,080人だということがわかった。
とりあえず1,080人にはカメラが行き届く計算。


川を見ると先ほどの鯉が泳いできた。
えぐれた部分の端はカリカリになっていて
顔も随分乾いているように見える。


鯉はずっと顔を上げて泳いでいて、そのうち干からびてしまいそうだった。
川は橋の高さいっぱいにまで水嵩を増していて
そこを通り過ぎるとき、鯉はきっと顔を水につけるだろうと待ってみた。
鯉は確かに水に顔をつけたが、また橋を過ぎると顔を上げていた。
顔が全く濡れていない。


鯉は頭部を防水加工していた。