キミの武器はなんだい?

小雨の降る朝方のスーパーの駐車場。
忘れ物を取りに行くと、駐車スペースに鳥居がハードルのように等間隔に並んでいた。


その鳥居に青年が布を掛けて歩いている。
予備の布が濡れた地面に置かれていて、その上に
乗っている小さな狸が「いっそげー!あ、ソ〜レ!」
と踊り狂っていた。


狸の存在に気づいていないのか、青年は緩慢な動きで作業を進めている。
狸の声はどんどん高くなっていき、仕舞いには聞こえなくなった。


無音の中、布を掛ける青年と踊り狂う狸。
この二つは右と左、別の世界で同時に起こった出来事なんだと思う。